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4‐7『殺らねばならない』

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4‐7『殺らねばならない』

・登場人物案内

 威末士長 ……… 特隊A<br>
 門手一士 ……… 武器C<br>


補給等のいるA攻撃壕の対岸。
崖下には、傭兵隊の先鋒である瞬狼隊の傭兵達の亡骸が散らばっている。
崖の上、少し離れた場所にも数名分の亡骸が横たわっている。
これは先ほど自由等がやり過ごした斥候達のものだ。
闇に包まれ、周囲を死体に囲まれた空間の一箇所で、一瞬だけ光が瞬いた。
擬装を施したシートによって隠された小さな塹壕、第1監視壕。
そこから銃身だけを突き出した12.7mm重機関銃が、火を吹いたのだ。

特隊A「最初の一人を無力化」

塹壕内で、双眼鏡を覗いている人物、特科の特隊A陸士長が声を上げる。

特隊C「………」

隣では同じく特科の特隊C三曹が、重機関銃のグリップを握り、
グリップの真上に取り付けられた長距離用照準機を覗いていた。

特隊A「三曹、次へ」

特隊C「ッ、あぁ……」



術師F「……え?」

詠唱を行っていた術師は、頭の半分を失っていた。

術師F「術師Gッ!?」

隣にいた相方の術師が彼の名を叫ぶ。
それと同時に、術師Gという名の術師の体はぐらりと傾き、地面へと倒れた。

術師F「術師Gが!術師Gの頭がッ!?」

親狼L「なんだこれは……新手の魔法攻撃か!?」

突然仲間の身に起こった事態に、
若干の落ち着きを取り戻していた傭兵隊に、再び動揺が広がってゆく。

親狼隊長「違う、落ち着け!これも恐らく敵の鏃だ!」

動揺し出した傭兵達を親狼隊長は怒鳴り飛ばした。

親狼隊「この上からじゃない。別の方角から……対岸か」

親狼隊長は谷の対岸の崖を睨んだ。

親狼隊「アイネ隊は詠唱を続けろ!手空きの者、弓と盾をかき集めろ!」

親狼隊長の命令を受け、傭兵達は再び対処のために動き出す。

術師H「嘘………」

そんな中で、未だに呆然としたままの少女がいた。
彼女は術師の一人だったが、突然の惨劇に目を奪われ、
詠唱も止めてしまっていた。

魔法隊長「術師H、何してるの!」

術師H「ひ!?……あ、魔法隊長」

呆然としていた少女へ、魔法隊の隊長から怒号が飛ぶ。

魔法隊長「聞かなかったの、詠唱を継続!上にもまだ敵はいるのよ!」

術師H「は、はい!えっと……鋼は誇りと力の証。見よ、愚者共!我等の鋼鉄の――」

魔法隊長に叱り飛ばされ、ようやく少女術師は詠唱を再開する。

魔法隊長「よし、ここは任せるわ。私は術師Gさんの代わりを――ビッ」

魔法隊長の言葉が奇妙な途切れ方をした。

術師H「?」

そして少女術師は体になにかが降りかかる感覚を覚えた。
少女は妙に思い顔を起こすと――魔法隊長の頭部が爆ぜていた。

術師H「へ」

素っ頓狂な声を上げる少女術師。
そんな彼女の上半身は、血と肉片で塗れていた。
少女の体に降りかかった物は、爆ぜた魔法隊長の頭部の血肉だった。

術師H「あ?……あ……ひ、いやあああああああッ!?」

数秒の間を置いた後に、少女術師は状況を理解。そして彼女は絶叫を上げた。

親狼F「術師Hッ!?」

術師H「い、嫌ぁッ!嫌ッ!やだぁぁぁッ!」

目と鼻の先で魔法隊長の惨劇を目の当たりにした彼女は半狂乱に陥り、
魔道書を捨ててあらぬ方向に駆け出した。

親狼L「ば、バカッ!」

付近にいた傭兵が、駆け出した彼女をあわてて押さえ込む。

術師A「術師Hッ、落ち着いて!」

術師H「嫌ぁッ!ま、ママッ!たすけてママぁッ!!」

少女を押さえ込まれた傭兵達は彼女を落ち着かせようとしたが、
彼女は地面を両手でガリガリと引っかきながら、絶叫を上げ続けた。



照準期の先に、傭兵の姿が写っていた。
おそらく女。軽装で目立った武器を所有していない所から見るに、
魔法に関係する人物と思われる。
その女の頭が、割られたスイカのように弾け飛んだ。
彼が照準の中心にその女の頭を捉え、親指に少し力を込めた直後に。

特隊C「………」

その直後、女の隣にいた少女が明後日の方向に駆け出した。
半狂乱に陥ったらしい、すぐに周りの仲間に押さえつけられたが、
それでもなお、逃げようともがいている様子が見えた。

特隊A「三曹、中央右端で別の敵に動きが」

彼、特隊C三曹の目には惨劇が写っていたが、
反して彼の耳は、冷静で淡々とした報告を聞く。
隣で観測手を務める特隊A陸士長の声だ。

特隊A「さっきの敵に変わって、魔法を使うつもりのようです。ヤツを狙って下さい」

特隊Aは特隊Cに次の標的を示す。

特隊C「………」

しかし重機関銃は次の標的を捉えようとしなかった。

特隊A「三曹?どうしました、次の標的は中央右端です」

特隊Aがもう一度標的の位置を伝える。
しかし重機関銃が動く気配はなかった。

特隊C「無理、だ……」

代わりに一言だけ言葉を発した特隊C。
彼の呼吸はひどく不安定だった。
さらに指先は振るえており、グリップをしっかりと握れていない。
そして暗闇のせいで特隊Aには分からなかったが、特隊Cの顔は真っ青に染まっていた。

特隊C「撃てない、無理だ……俺にはこれ以上撃てない!」

声を震わせながらも、今度ははっきりと言葉を発した特隊C。
彼は敵に向けて発砲することを拒絶した。

補給『どうしたスナップ1?こちらへの敵の攻撃は未だに継続中!敵、オペレーターの排除を急いでくれ!』

特隊Cが叫んだ直後、脇に置かれた無線機から補給の声が響いた。

特隊A「二曹、それが……特隊C三曹が目標への発砲を拒否しています」

補給『何?特隊C三曹、どうした?敵の脅威は未だに健在、早急に排除して欲しい』

特隊C「私には撃てません……ッ!若い子を二人も殺した!今も子供が怯えて逃げ惑っている!私にはこれ以上彼等を撃てないッ!」

特隊Cは震えた声で、無線の向こうの補給に向けて叫んだ。

補給『三曹、気持ちは分かるが今は――』

隊員O『寝言ほざいてんじゃねぇッ!こっちだって一人死んでんだぞタコがぁッ!』

一瞬無線に雑音が入り、補給の声に変わって怒声が飛び込んできた。
声の主は香故三曹だ。

隊員O『これ以上味方殺させる気かお前はぁッ!四の五の言ってねぇで吹っ飛ばせボゲェッ!』

特隊C「………無理だ……無理だ、無理だ!」

特隊Cは震える手でグリップを握り、血走った目で照準機を覗き続けていたが、
押し鉄に置かれた指に力を込める事はできなかった。

隊員O『いい加減に――』

再び無線に雑音が入り、無線からの声は補給の物に戻った。

補給『分かった、特隊C三曹を射手から外せ。特隊A陸士長、代わりに50口径について目標を排除しろ』

特隊A「了解……三曹、代わります」

特隊Cに代わって、特隊Aが重機関銃の射手に着く。

特隊C「ッ……ハァ……ァ、ツァ……」

重機関銃を離れた、特隊Cは塹壕の端に座り込み、頭を抱えて荒い呼吸を続ける。

特隊C「殺した……この手で、二人も……ッ」

武器C「……無理もねぇや」

横で塹壕の外を警戒していた特隊C一士が、特隊Cの様子を横目で見ながら一言呟いた。
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